注目を集めるARV療法
抗レトロウィルス(ARV)療法と、その実施に資金を投入する動きが、医療界全体に広がりつつあります。
貧資源地域におけるARV療法に関するセミナーが、シアヌーク病院主催、ベルギーのアントワープ熱帯医療研究所の協力にて開催され、今注目を集めているこのテーマについて、議論が展開されました。
ほとんどのHIV患者は発展途上国で発生しています。このため、95%の患者はARVを購入する経済的余裕がなく、さらにその多くは基本的な医療を受けられる環境にさえありません。ARV医薬は、こうした国々にも低価格で供給されるようになってきましたが、まだまだ多くの障害が存在しています。初期的な医療インフラを整えて機能させ、基本的医療を提供できるようにすることが急務です。
ARV療法へのアクセスが容易になるにつれ、医療共同体のなかで広く遵守事項や、薬物耐性について議論することが必要であり、また、正しい処方が絶対必須であること、一生継続して投薬を受ける必要のあること、などを強調しなければなりません。資源不足の問題は、DOT(直接監視療法)を用いた結核治療においても指摘されました。カンボジアでは、現在、8ヵ月間にわたる完全治療を受ける結核患者は、50%にとどまっています。医薬品および、フォローアップケアをしてくれる医療専門家の数が限られているからです。カンボジアが、ARV療法へのアクセスを提供することを計画し、その実施のための資金が有効に活用されれば、多くの分野で医療システムのインフラを改善できるでしょう。
シアヌーク病院HIVアドバイザーで熱帯医療研究所スタッフのルート・リネン医師は、国立エイズ研究所のテイア・ファラ医師を迎え、熱帯医療研究所のロバート・コレバンダー医師を座長として、このミーテイングを開催し、オープンデイスカッションのためのフォーラムを企画しました。ゲストには、国立大学教授でカンボジア国立エイズ研究所のアドバイザーである、タイ・ホア氏が招かれました。
ロバート教授は、世界保健機構の臨床エイズ治療およびARV療法のアドバイザーです。1985年、彼はアフリカにおけるHIV感染について、UNAIDSの現所長であるピーター・ピオット医師と共に研究を始めました。このプログラムおよびシアヌーク病院で実施してくださった、彼の熱のこもったご講義に深く御礼申し上げます。
強力な助っ人ー客員外科医の方々
アンドリュー・バード医師
火傷が専門のアンドリュー・バード外科医が当病院を訪れ、数人の患者に対して貴重な診断とアドバイスを与えて下さいました。アンドリュー医師は6月に再訪され、自ら執刀して、彼らに手術を実施してくださることになっています。また、彼の講義も予定されています。
ロナルド・ボート医師
アンドリュー医師は、友人であり同僚でもある、香港のプリンス・オブ・ウェールズ病院神経外科助教授のロナルド・ボート医師と共に来訪されました。南アフリカ出身で3年間香港に在住されていたボート医師は、夫人とご子息を伴って訪れ、頭部外傷と頭蓋内感染について講義してくださいました。そして、驚くべきタイミングのよさで、入院患者の一人について専門家として助言され、その脳内膿瘍から発生している液体を、除去するための手術を孰刀してくれたのです。彼の専門知識と技術がなければ、この患者を救うことはできなかったでしょう。さらに、彼の指導とアドバイスのおかげで、当病院スタッフで今後もこの手術を継続的に行うことができるようになったのです。
今回の当病院訪問について、ボート医師は、次のような感想を述べていらっしゃいました。「カンボジアを訪れ、シアヌーク病院に滞在したことは、とても貴重な経験でした。あらゆる物資が溢れている先進都市の香港からこの発展途上国にやってきて、悲惨な状況と膨大な医療需要を目の当たりにして、多くのことを学び、考えさせられました。
ジョー・マコーミック医師
コロラド州からご訪問くださった、整形外科のジョー・マコーミック医師は、4回の講義を実施、そして、当病院の外科研修医と共に数件の手術を執刀されました。彼は、患者診察時に務めて臨床講義を実施してくださり、病院スタッフともすぐに打ち解けて友情を築かれました。彼は、この病院を訪れたことによって、本当に医学の視野が広げられたと語り、スタッフの献身ぶりに感動したとおっしゃいました。
「海外整形外科プログラムのボランテイアに応じたとき、米国外の新しい国で医療事情を学びたいと熱望していました。私がプノンペンで経験したことは、その期待を遥かに超えたものでした。この病院全体に、訪れる人すべてを歓迎するバイタリテイが漲っていて、とても刺激を受けました」
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