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2003 5
マンスリーレポート
海外看護ボランティアが当病院を高く評価

海外看護ボランティアが当病院を高く評価

 『NVO海外看護ボランテイア』に所属するお二人のボランテイアが、シアヌーク病院を訪問されました。
 ニューヨーク在住の看護指導者であるキャロライン・カムーナス博士と看護管理者であるバーバラ・ジョスリンさんです。二週間にわたって、病院の全看護婦と対話形式の講義を実施してくださいました。リーダーシップ養成研修の一環として行われた講義には、ストレス管理や医師と看護婦間との関係などのトピックが盛り込まれました。

 帰米後、お二人はNVOにレポートを提出される予定です。
 NVOの目的は、カンボジアのような国々において、看護レベルを引き上げるための教育ネットワークを構築すること。ボランテイアの方々は、様々な看護学校と連携をとり、そのカリキュラムの見直し、変更や改善が必要な部分を見出す業務に精励されています。シアヌーク病院は、カンボジアにおいてNVOのプログラムに関わっている唯一の機関です。他には、看護学校や研究所などが交流しています。
 さらに多くのNVOボランテイアの方々が、今年後半に当病院を訪問してくださることを期待している次第です。彼らは、看護状況の査定、救急治療室の看護スタッフに対する指導のほか、糖尿病・心臓病の専門看護婦の研修を行ってくださる予定です。


カンボジアにとってこの病院は偉大な希望

 当病院外科部コーネリア・ヘーナー医師のご友人が、先般ボランテイアとして指導のために来院され、国際的な視点から非常に有益なアドバイスをいただきました。ユルク・トイシャー医師と看護婦のリタ夫人は、スイスから初めてのアジア旅行で当病院を訪れ、2週間にわたって外科及び看護スタッフにお力添えくださいました。貴重な経験ができたと感激された様子のご夫妻は、病院に一歩入ると、すぐに、ビジターだけでなく患者たちも非常に心温まる雰囲気に浸ることができますとおっしゃいました。

 病棟や手術室の日々の活動を視察されたトイシャー医師は、
 「病棟では、上司の方々は正確な指示を与えるだけでなく、部下の指導に熱を入れています。同様に、手術室では、チームが患者の安全のためのあらゆる最新基準を遵守して、患者の手術準備をされていました。手術自体も、国際的にも最高レベルといえる、極めて優れた水準でおこなわれています。西欧諸国での処置との唯一の違いは、使用される資材量が著しく少ないことだけです。
 「なにより感銘を受けたのは、この優れた病院では、スタッフ一人ひとりがベストを尽くしているということです。」
 カンボジアにとってこの病院が偉大な希望であることは疑いの余地がありませんとトイシャー医師は絶賛されていました。


元スタッフ医師による産婦人科研修

 ワシントンのエバーグリーン婦人健康センターに勤務する産婦人科医のデビッド・アスムッセン医師が三度目の訪問をされました。
 デビッド医師は、当病院の元救急治療室室長でもあります。
 今回のご訪問では、産科手術の手順と技術を外科スタッフに指導され、また大きな卵巣腫瘍をもつ29歳女性の手術にご協力いただきました。さらに、救急治療室の内科スタッフに対する指導のほか、図書館と薬局にそれぞれ書籍と医薬品をご寄付下さいましたアスムッセン医師のご厚意に、深く感謝いたします。


医学生ボランテイアの採用

 医学生のイアン・スチュワートさんは、4年前に観光でカンボジアを訪れた際、この国の人々に魅了されたそうです。イアンさんは、カンボジアを再訪し、選択研修期間をプノンペンで過ごしたいと希望されていました。当時、シアヌーク病院は医学生の選択研修を受け入れる新部門を計画していたところで、イアンさんの希望はタイミングよく実現することになったのです。
6週間にわたる滞在中、彼はルット・リネン医師の下でHIV患者に対するコスト効率を考慮した検査や、新規データ入力システムの調査を実施しました。また、HIV部の患者相談や講義などの日常業務も体験しました。


アメリカで学んだカンボジア人医師が祖国を再訪

 『ファミリー・メディシン』の上級レジデントであるアダム・ハイ医師が、カリフォルニアから当病院を訪問され、1ヶ月間滞在されました。
 カンボジア出身のアダムさんのご一家は、ポルポト政権を逃れて、アメリカに渡りました。彼の幼少の記憶は、愛する人々がクメールルージュの手で殺戮された情景と、破壊されつくした祖国だけでした。二十年をへて、クメールルージュから解放はされましたが、今度は極度の貧困に苦しむ国民を目の当たりにして、ショックを受けました。

 彼には、「カンボジアには希望がない」ように見えましたが、カンボジアの最貧民のための医療に尽くしてくれているこの病院が本当に有難く思えたということです。アダム医師は、当病院への訪問は専門的にも学ぶことが多かったと感謝されていました。そして、何よりも、いつか祖国に戻って医療に尽くしたいという、積年の夢を思い出させてくれたそうです。

 アメリカで医学を修めたアダム医師にとって、アメリカでは教科書で読むだけしかできない様々な熱帯病や皮膚病を、実際に当病院医師と共に治療にあたったことは、大きな経験になりました。最新の診断手段や治療方法に恵まれていないというハンディにもかかわらず、当病院の治療技術が高水準にあることに驚いたといいます。

患者の物語
「高難度の緊急手術が成功」 ヘン・ソキーさん
 20歳の少年ヘン・ソキーさんが半年前に来院したとき、肝臓近傍の胆管に慢性炎症が起きて、閉塞性黄疸にかかっていました。急きょ体外から排液管を挿入する手術を施しましたが、生存していくためには胆管バイパスをつくって内部排液できる処置が必要でした。

 ちょうどスイスから訪れていた、経験豊かな腹部外科専門のユルク・トイシャー医師が、この二回目の難手術を執刀して下さったのです。慢性炎症と胆管周囲の深い傷のために、手術は複雑をきわめましたが、トイシャー医師の専門技術のおかげで無事成功したのです。ソキーさんは全快し、退院できました。
 この症例は、カンボジアに先進の専門化された医療研修が必要であることを物語っています。
スタッフの横顔
ソウン・サンバットさん (メンテナンス)
 「みんな私を働きものだといってくれますが、みなさんのお役に立てるよう、自分のしたいことをしているだけです。」

 控えめに語るメンテナンス部のスタッフ、ソウン・サンバットさんは、非常に重要な役割を担っています。病院の水まわりの責任者であるサンバットさんは、自らの任務に全力で尽くす一方、他人を手助けするために自らの多くを捧げています。また、外来患者が診察を待っている屋外の庭を快適な状態に維持するためにも、多大な時間を費やしています。上司のイエム・ソフォムさんは彼のことを、
 「彼は自分の仕事にとてもまじめに取り組む人です。思いやりも深く、助けを求めてくる人に対してとても謙虚です。」
 と評価しています。

ソウ・ダラさん (警備)
 ソウ・ダラさんは、エルトン・ジョンHIV/AIDS資源センターEJRCに、2000年7月のオープン以来、警備員として勤務してきました。非常に責任感がつよく、HIV患者やスタッフ全員から敬意をもって慕われています。

 心優しいダラさんは、患者に徹底して尽くします。ほとんどの患者は、差別や偏見を受ける、極貧の厳しい環境に住んでいますから、子供たちを毎土曜に支援グループへつれてくることがあります。親たちはダラさんを心から信頼して子供を託し、おしみなく時間をとって子供たちと遊んでくれるダラさんが大好きです。
 ダラさんはクリニック周辺の庭の手入れも担当しており、来院した患者さんが心地よく過ごせるように配慮されています。今回の評価に値するに充分な功績を挙げてこられたダラさんを、心より称えたいと思います。
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